プレカットのメリットデメリット

現在の住宅建築に欠かせない「プレカット」ですが、どんなメリットとデメリットが存在するかはあまり知られていません。そこで、今回はプレカットのメリットとデメリットに焦点を合わせて解説していきます。

 1.プレカットのメリット

次に、プレカットのメリットについてまとめてみました。

・工期の短縮ができる

・コストダウンができる

・多くの建築会社で対応可能

・職人の技術に左右されない

プレカットを使用する場合、現場では予め加工された木材を使用します。加工済の木材を使用することで、現場での大工職人の手間が少なくなり、結果的に工期の短縮へと繋がりました。現代では、大工職人の数が減少の一途を辿っています。そのためプレカットは、大工職人の負担を軽減しつつ安定的な建築数を保つために欠かせない工法となっています。発注者にとっても、新築の家が早く完成するのは嬉しいことですね。

また、プレカット工法はコストの面でも大きなメリットがあります。工期の短縮に成功したことで、大工職人の人件費の削減が可能になりました。さらに、現場での加工が減ったことで廃材が少なくなり、廃材の集積費用が抑えられるのも強みですね。特に一軒家の建築では建物の周りに足場を組んでしまうと作業スペースが限られるので、廃材が溜まってしまうと置き場所に困ってしまいます。廃材が少なく障害物が少ない現場は、大工職人の安全面でも良い効果が出るでしょう。

現在では、プレカットを行わない建築の方が珍しくなっています。林野庁のデータによると、2016年では「木造軸組構法」の92%にプレカットが採用されていました。つまり、多くの建築会社にとってはプレカットを使うことが当たり前になっており、建築会社選びで困る心配がありません。一定の品質を保つという面では、多くの建築会社で対応できるのはメリットですね。

そして、プレカット工法はコンピューター制御と機械加工で行われているので、大工職人が手作業で行うよりも早く、安定的に加工ができます。現場で継ぎ手などの加工をするとなると、担当する大工職人による技術差が生じてしまい、常に一定の品質を保つのが困難です。プレカット工法は、日本建築の技術を一定の水準に保つために大切な工法となりました。

2.プレカットのデメリット

以下、プレカットのデメリットをまとめてみました。

・木材の見極めができない

・複雑な加工に不向き

・乾燥などで接合部にガタが生じる

・精度が落ちる

・職人の技術を継承できない

プレカットは、大工職人のように木材の見極めができません。その理由は、プレカットはコンピューター制御による機械加工で行われるため、材料となる木材1本1本の個性や特徴を認識できないからです。そのため木目を活かしたい、状態によって使用する場所を変えたいという時に、プレカットは不向きです。

また、機械加工では複雑な加工は不向きです。機械加工の場合は、大工職人のように少しずつ角度を変えたり形状に合わせて力加減を変えるなどの微調整ができません。そのためプレカットは、複雑な継ぎ手の加工を行う際にはデメリットとなります。プレカットを行う機械は年々複雑な加工にも対応できるようになってきていますが、まだまだ大工職人の技術と同じには至っていません。

プレカットの作業工程にもデメリットがあります。予め加工をした木材を現場に運ぶので、プレカットをしてから実際に使用するまでにはタイムラグが発生します。この間に木材の乾燥などで寸法に微妙な誤差が生じ、接合部にガタが起きることがあります。このように、プレカットでは熟練の大工職人の加工と比べて精度が落ちることが問題です。

大工職人の技術という面では、プレカットを用いることで、古くから継承されてきた職人の技術を継承できないという問題もあります。プレカットを用いることで、熟練の職人と新人の職人のような技術格差はなくなります。ですが、プレカットでは過去から現在に至るまでに培われてきた職人技の継承ができないので、プロにしか出来ない加工技術を持った職人が減少してしまっているのが大きな問題です。

現に、特殊な構造や古い住宅での作業では、現在の新築の建物とは構造や作業手順が大きく異なり、熟練の大工職人でないと対応できないケースがあります。

上記のように、プレカットの導入には複数のデメリットがあります。

 3.プレカットとどう向き合っていくか

本記事ではプレカットのメリットデメリットを解説してきました。日本の建築の課題は、「どのようにプレカットと向き合っていくか」だと思います。工期短縮だけ、コストダウンだけを追い求めずに、いかに技術力のある大工職人を育てていくかが大切です。

人が生きている限り、建物もまた生き続けていきます。プレカットなど、機械で代替えできる部分は積極的にサポートしてもらいつつ、日本建築の高い技術を継承し続けていける道を模索していきましょう。

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