古いなんて言わせない!和室と床の間の関係性

床の間(とこのま)と聞くと、どのようなイメージが浮かんでくるでしょうか? 「何のためにあるのかわからない」という方もいれば、「そもそも床の間がどんなものかわからない」という方もいるかもしれませんね。和室にはつきものの床の間ですが、近年は和室そのものが減少しているため、見かける機会もめっきり少なくなってしまいました。しかし実際は、和室の象徴として、床の間は重要な役割を果たしています。本記事では、和室と床の間の関係性について、その役割や種類、過去からの変遷に至るまでを解説します。

1.床の間とは

床の間とは、和室の左奥もしくは右奥にある、壁がくぼんでいて、かつ床が少し高くなったスペースのことをいいます。ドラマや映画などで、掛け軸がかかっていたり花が生けられたりしている場所を見かけることがあるのではないでしょうか。

床の間は、お客様をもてなすために様々な飾り付けをするスペースとして使用されているため、和室を象徴する場所といっても過言ではありません。お客様をもてなす空間であることから、部屋の奥にある床の間付近を「上座」とし、反対にある出入口付近を「下座」としました。来客等がある場合は、お客様もしくは身分の高い人を上座に迎え、床の間を背にして座ります。

床の間は様々な要素から構成されております。代表的な要素を紹介します。

・床柱

床の間に建てられている化粧柱のことを指し、使われる木の種類によってその格式が異なります。

・床板

床の間に張られた板畳のことを指し、格式の高い床の間においては畳敷きになります。

・床框

床の前に水平に張られた木のことを指します。床の間における見せ場の一つとされ、様々な種類の木が使用されているのが特徴です。

・前板

床の間の前に張られた板畳のことを指します。

・落し掛け

床の間上部に張られた横木のことを指し、小壁を受け止めています。こちらも使われる木の種類によって、その格式が異なるのが特徴です。

これら以外にも様々な要素を組み合わせることで、多種多様な床の間がつくられています。

2.床の間の歴史

床の間の起源については、身分の高い人が座るための場所として一段高い場所を設けた、僧侶が家に仏像を置くためのスペースから始まった、など諸説あり、現在でも正確なことはわかっていないようです。

歴史的には寝殿造から書院造へと建築様式が変わっていく際に、床の間が設けられるようになります。特に千利休に代表される茶の湯文化において、床の間は大きな役割を果たします。茶室には床の間が設けられ、季節の花や掛け軸、茶道具などを飾り客人をもてなす場所として活用されました。江戸時代以降の数寄屋造の建築様式では、一般庶民の民家にも床の間が見られるようになりました。身分の高いお客様を招くために床の間が置かれていたようです。

さらに明治時代以降になると、一般庶民の住宅においても床の間を設けることが当たり前になり、現代へとつながっていきます。

3.床の間の種類

一口に床の間といっても、実に様々な種類があり、用途や条件によって適したものが設けられています。形式によってその格が異なり、格式が高いものは厳格な造りになります。逆に一部の要素が省かれているものもあります。ここでは、床の間の形式を5つ紹介します。

・本床

床の間として基本的なものがすべて揃っており、格式の高い床の間です。床框を用いて床板を高くしており、畳が敷かれています。床柱や落し掛けについてもきちんと設けられており、材質や形状に関しても決まりがあります。

・蹴込床

床框を用いず、蹴込み板をはめ込むことで床板を高くしています。本床と比較すると簡素な造りになっています。また、蹴込み板の代わりに丸太や竹を使用したものも見られます。

・踏込床

こちらも床框を用いず、地板を張っているだけの形式です。そのため和室の畳面との段差がほとんどありません。 

・釣床

簡素な床の間の形式で、床板や床柱を置かず、上部に小壁や落し掛けなどが設けられているだけの形式です。

床板がないため、置き床と併用する場面も見られます。

・置床

移動可能な床板を用いる形式です。自由に移動させることができるため、好きな場所において使用します。

このように様々な形式があり、基本的なものから派生した簡素な造りの床の間が多く見られます。ただし、形式の違いこそあれ、本質的な意味は変わりません。お客様をもてなすための空間、それが和室における床の間の役割です。

4.様々なモダンな床の間

現代の建築では、和室そのものが設けられていない家も多く見られ、床の間を見かける機会はめっきり減ってしまいました。和室があっても、スペースの都合上床の間を削ってしまう場合があり、どんどん肩身が狭くなっているのが現状です。ですが、現代の生活様式にマッチした和室に対するアクセントとして、現代風にアレンジされた床の間もしばしば見られます。

例えば

・床柱を置かずによりシンプルに構成されたもの

・照明の配置を工夫することにより温かみのある雰囲気を持ったもの

・色や模様などで遊んだもの

などの個性あふれる床の間が登場しています。床の間を完全になくすのではなく、今の住空間にマッチした形で残り続けているのです。今後は、これまで以上により自由で新しい形式の床の間が見られるのではないでしょうか。

5.まとめ 

和室を象徴するスペースとしての床の間。床の間の意味を再認識すると、新たにその魅力を感じることができますね。ただのデッドスペースとして考えるのではなく、和室の象徴として、今の時代と調和を図り、より魅力ある空間づくりに役立てていくべきではないでしょうか。

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