プレカットとは?

「プレカット」。一見すると馴染みのない言葉かもしれませんが、私達が普段生活している住宅やよく見かける建物には、このプレカットが多く使われています。そこで、プレカットとは何なのか、プレカットをするとどうなるのか?今回は、プレカットについて詳しく解説していきましょう。

1.プレカットって何?(プレカット材・プレカット工法) 

プレカットとは、「住宅建築に使用する木材を予め工場で切断・加工する」という意味です。専門のプレカット工場で予め木材を加工し、現場では組み立てに専念する仕組みになっています。プレカットには、

・プレカット工場

・プレカット工法

・プレカット材

の3つの言葉があり、それぞれ加工工場、加工法、出来上がった木材のことを指します。

林野庁のデータによると、プレカット材が初めて開発されたのは、1970年代中頃〜1980年代にかけてです。1980年代、コンピューター制御で機械加工できるシステム「プレカットCAD/CAMシステム」が開発され、プレカット材の安定した生産が可能になりました。

主なプレカットの工程は、以下の通りです。

1.木材の側面部分(梁や桁)を切断する

2.ボルト穴、アリの加工

3.木材の木口をプレカット(ホゾ、カマなど)

4.製品検査

5.図面と照合

まずは、図面を元にプレカットするデータを作成します。使用されるデータは、

・大きさ

・数量

・加工部位

・加工形状

などです。データが作成されたら、材料の加工に入ります。通常のライン加工と異なり、プレカット工場では1棟単位でラインを組むのが特徴です。この仕組みのおかげで、他の棟の木材の混入が防げるようになっています。加工が終わったら寸法や加工形状の検査を行い、部材ごとに施工現場へ搬出されていきます。

こうして施工現場に届いた木材がプレカット材と呼ばれ、大工職人の手によって組み立てられていきます。プレカット材は、工場での一貫した管理と加工によって、安定した品質を提供してくれています。現場で手作業で加工するとなると、担当する大工職人の技術やその日の天候によっても品質に差がでてきてしまうでしょう。特に、雨に濡れてしまうと木材が水分を吸ってしまい、すぐに組み立てに入れなくなってしまう可能性があります。

上記のように、プレカット材を使用することで、建物の安定した品質と予定通りの工期を実現しやすくなりました。

2.プレカットの普及率

現在の日本の建築現場では、プレカット材を使った施工が主流になっています。このプレカットがどのようにして主流になったのか、その歴史について少し触れておきましょう。

プレカットが施工現場に登場し始めたのは1990年頃です。林野庁のデータによると、1989年では「木造軸組構法におけるプレカット率」は、たったの7%でした。1994年になると26%、10年後の1999年になると48%と、プレカットは着実に世間に普及していきます。

2000年代に入ってもこの流れは加速していき、2004年には普及率が一気に76%に到達しました。その後も普及率は上がる一方で、2016年ではプレカットの普及率は92%になっています。このデータから分かる通り、現在の日本の建築ではプレカット材を使った施工が大部分を占めています。

プレカットの普及率に比例するように工場数も増え、2000年以降は常時600を超えるプレカット工場が稼働しています。プレカット工場の増加に伴い材料の入荷量も増加していき、2016年の材料入荷量は981万m3でした。

プレカット率がここまで普及してきた背景には、プレカット工場の業態変化が関わっています。本来プレカットは、大工職人の刻み加工を代替するための工法でした。しかし、大規模なプレカット工場では、加工から流通まで一貫して担い始めます。このように、時代に合わせて柔軟に変化することでプレカットの需要がますます増加し、普及率を押し上げる形となりました。

3.これからのプレカット

広く一般に普及したプレカットですが、現在でも進化は続いています。まずは、輸入木材から国産木材への材料の転換です。元々は、国内で「国産材ラミナ」やその他の集成材が安定して調達できないことが原因で「輸入ラミナ」や輸入集成材を調達していました。ですが、円安が進み、輸入コストが上がったこととが調達の大きなネックとなります。現在では、国産材ラミナが安定して調達できるようになったこともあり、国産ラミナやその他集成材へ材料を切り替える動きが見られるようになりました。

加工面では、新たに「金物工法」という仕口の形状が異なる加工法が普及始めています。木材の接合部分に金物で補強する金物工法を採用することで強度が増し、品質の向上へと繋がりました。また、施工現場では組み上げをしてからドリフトピンを打ち込むだけで作業が終わるので、金物工法は工期の更なる短縮にも貢献しています。

上記のように、プレカットは日々進化を続けています。現在は出来ないような加工法も、AIや技術革新で近い将来現実のものとなるかもしれませんね。

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