不燃材の比較 -不燃材・準不燃材・難燃材-

防火材という言葉をみなさまご存知でしょうか。「防火」という名のとおり、万が一火事が起こった場合に延焼を防ぐ目的で使われる材料のことです。

ここから、発火時間を基準に不燃材・準不燃材・難燃材の3つのグループに分かれます。これらの材料を適切に使用することによって、初期火災が広がるのを防ぐことができます。今回は、この防火材の種類についてご紹介します。

1.発火時間による分類

不燃材、準不燃材、難燃材の3つに分ける基準は発火時間にあります。加熱後何分で発火するか、という点です。直接火を当てて対象の材料を加熱し、発火に至るまでの時間で3種類に分類しているということになります。この基準とは、不燃材が加熱後20分以上、準不燃材が加熱後15分以上20分未満、難燃材が加熱後10分以上15分未満です。基準となる加熱の温度は、初期火災が想定されているため、だいたい750℃前後。なお、この基準を適用する試験として、室内温度は23℃と決められています。

2. 各種の特性や用途

それぞれの材料のその他の特性(剛性、防腐性など)によっても変わります。それに合わせて、おおよそ建築における使用箇所も決まっています。

それぞれどういった材質で、建築資材としてどのような場所に使われているのかを1つずつ分けて見ていきましょう。

●不燃材

不燃材は、残り2つと比べてもっとも燃えにくい防火材です。平成12年に建設省(現在は国土交通省に再編)が出した建設省告示第1400号「不燃材料を定める件」で定められている不燃材は以下のようになっています。


    1.コンクリート    2.れんが    3.瓦    4.陶磁器質タイル    5.繊維強化セメント板    6.厚さが3mm以上のガラス繊維混入セメント板    7.厚さが5mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板    8.鉄鋼    9.アルミニウム    10.金属板    11.ガラス    12.モルタル    13.しっくい    14.石    15.厚さが12mm以上のせっこうボード(ボード用紙原紙の厚さが0.6mm以下のものに限る。)    16.ロックウール板    17.グラスウール板

主には金属、セメント、合成繊維などが含まれています。材料により使用箇所は多少異なりますが、内装の仕上げには使用するよう、法律で定められています。

●準不燃材

不燃材に準ずると書き、不燃材に比べてやや劣るものの、防火性能がそれに次いで高い材料を指します。平成12年に建設省が出した建設省告示第1401号「準不燃材料を定める件」で定められている準不燃材は以下のとおりです。

第11.不燃材料のうち通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間建築基準法施行令第108条の2各号に掲げる要件を満たしているもの2.厚さが9mm以上のせっこうボード(ボード用紙原紙の厚さが0.6ミリメートル以下のものに限る。)3.厚さが15mm以上の木毛セメント板4.厚さが9mm以上の硬質木片セメント板(かさ比重が0.9以上のものに限る)5.厚さが30mm以上の木片セメント板(かさ比重が0.5以上のものに限る)6.厚さが6mm以上のパルプセメント板

第21.不燃材料2.第1第2号から第6号までに定めるもの

準不燃材は、主に火を使う場所に仕上げ材として使用されています。また、一般的な壁紙などにも使われる場合があります。

●難燃材

不燃材、準不燃材と比べて発火が早いものの、指定されていない材料と比較して燃えにくい特性を持っています。平成12年に建設省が出した建設省告示第1402号「難燃材を定める件」で定められている難燃材は以下のとおりです。

第11.不燃材料のうち通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後10分間建築基準法施行令第108条の2各号に掲げる要件を満たしているもの2.難燃合板で厚さが5.5mm以上のもの3.厚さが7mm以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.5mm以下のものに限る。)

第21.準不燃材料2.第1第2号および第3号までに定めるもの

難燃材は先の2つと比べて軽量なため、エレベーターのかご部(人が乗る部分)に使用されているのが主流となっています。

3.まとめ

防火材料である、不燃材、準不燃材、難燃材について説明してきました。

これを読まれた方の中には、「家全てを防火材で建てたらいいのではないか?」と思われた方もいるでしょう。しかし、先にも述べたとおり、この基準によって選定されるのはあくまで難燃性だけなので、剛性や防腐性といった、他に各部に求められる条件をクリアしているとは限らないのです。昨今は防火木材なる、従来よりも燃えにくい加工を施した木材が登場するなど、建築物の防火性についての意識は今まで以上に高まっているのは事実です。しかし、それだけで建築物が成り立つかと言われれば、なかなかそうはいかないものです。もちろん、建築業界も同様のことを考えている企業があるかもしれませんが、実現するにはもう少し時間がかかるのでしょう。

とはいえ、この防火材が存在するおかげで大規模火災につながることが少なくなったことは事実です。

新たに作る建築物の基準にも防火性が入っていることからも、今後ますます防火材料の必要性が語られることになるでしょう。もし、これをお読みの方でこれから家を建てる予定の方、リフォームを考えている方は少し頭に入れておいてもいいかもしれません。

記事一覧へ戻る