F☆☆☆☆(エフフォースター)とは何⁇

シックハウス症候群という病気を覚えているでしょうか。ある時期にニュースで頻繁に取り沙汰されていたフレーズなので、耳にしたことがある方は多いかもしれません。言葉だけは知っていて具体的な内容は知らないという方もいれば、建物の中で化学物質を吸い込んでしまうことで発生する健康被害、という知識をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。ですが、何を原因にして起き、どういった症状を発症するという踏み込んだ知識までお持ちの方は、多くいらっしゃらないのではないでしょうか。この記事では、木材を知っていく上で避けては通れないシックハウス症候群についてご紹介します。そして、それに深くまつわる「F☆☆☆☆(エフフォースター)」という規格についてご説明します。

1.シックハウス症候群とは

シックハウス症候群は、住宅などを形作る建材や屋内に置かれた家具などから発生する、有害な化学物質、カビやダニによって汚染された空気を吸ってしまうことなどで起きる健康被害を総称したものです。シックハウス症候群(Sick House Syndrome)を直訳すれば「病気の家症候群」となるように、固有の条件における特定の症状を指すわけではなく、住居が起因となって生じる健康被害全般を総称したものが、シックハウス症候群とされています。厚生労働省の報告によれば、皮膚や目、呼吸器への刺激症状、めまい、頭痛などの不定愁訴と全身の倦怠感などが主な症状とされており、いずれも風邪や花粉症と勘違いされることも多いです。

シックハウス症候群は、欧米で1980年代に社会問題となったシックビルディング症候群を語源としています。環境意識の高まりから、その時期を境に広まった省エネ志向によって空調を節約したことで換気が不完全となり、室内の空気が滞って汚染されたことが原因で生じたものだと考えられています。同様に、シックハウス症候群も住宅の気密化が原因ではないか、というのが現在の定説です。

かつての日本の住宅は適度に風が吹き抜けており、空気が入れ替わりやすい構造でしたが、近代の住宅は断熱性の高まりとともに気密化が進んでいます。技術的には大きく進歩しており、住居としての住みよさは増しているのですが、気密化に伴い合板の接着剤や塗料などから揮発するホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレンなどの化学物質が、屋内に充満してしまうリスクが生まれてしまいました。

シックハウス症候群は、初夏に発症するケースが多いと言われています。なぜなら、気温が高まる季節に各種化学物質が揮発しやすくなるからです。併せて、初夏は湿度が高いためカビやダニも発生しやすく、それを起因とする発症のリスクも高まります。また、新築やリフォーム後の家の建材や塗料は揮発しやすいことから、発症ケースが非常に多くなっています。

2.建築基準法改正によるシックハウス対策

シックハウス症候群は、住宅の環境が大きな原因の一つとされてきたことから、厚生労働省は化学物質の室内濃度指針値を示してきました。そして、2003年の7月1日を境に改正建築基準法が施行され、以降に着工された建物はすべてこの基準に従って建てられています。この法律によって規制されたのは、木材の防腐、シロアリなどの防虫処理に用いられていた「クロルピリホス」接着剤などの原料として用いられる「ホルムアルデヒド」の二種です。

いずれも健康被害を生じさせてしまう有害な物質なため、前者は完全に使用が禁止され、後者にも厳しい使用基準が定められました。

3.F☆☆☆☆とは

建材におけるホルムアルデヒドの使用規格にあたるのが、この記事のタイトルになっている「F☆☆☆☆」です。Fというのがホルムアルデヒドの発散濃度を示した基準であり、F☆☆、F☆☆☆といったように安全性が高いほど☆が増え、星が四つのF☆☆☆☆が最高等級とされています。

また、F☆は使用基準を満たさないため建材として使うことはできません。これはJIS、JAS、国土交通大臣認定によって等級付けされるもので、F☆☆、F☆☆☆は既定の使用面積内であれば使用可とされ、F☆☆☆☆については発散濃度が非常に低いということで、建築基準法の規制を受けずに使用できる建材となっています。

4.まとめ

シックハウス症候群は、現在でも完全なメカニズムは解明されていません。上に挙げられている原因だけでなく、環境の変化による精神的な問題やアレルギーなどが関連している可能性も指摘されています。もしシックハウス症候群を発症してしまっても、風邪や花粉症と似ていることから診断が難しいですが、慢性的に症状が長引いてしまうケースもあるため、可能な限り発症を避けたい病気です。

原因がわかっていないので対策が難しい部分もありますが、カビやダニを防ぐためのこまめな掃除や積極的な換気とともに、木材のF☆☆☆☆についての知識を持っておくことが大切です。今後みなさまが家を建てたりリフォームをされる機会が訪れるまで、この規格のことを頭の隅に留めておいていただくことで、お役に立てれば嬉しく思います。

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