木材と塗装の切り離せない関係性とは?
みなさまは木工工作の経験はおありでしょうか。
DIYだと意気込んで家具造りをしたことがある方、学校の授業や自由研究で小さな木材を切ったり組んだりした方など、程度の差はあるかとは思いますがこれまでの人生で一度も木材の加工をしたことがない方は少ないのではないかと思います。
木材を加工していく過程で色を塗ろうとしたことがある方は、その難しさに直面したのではないでしょうか。切断面はざらざらとしていて塗料が馴染まない、または綺麗な面に塗ろうとしても色が上手く付かず木目が台無しになってしまうなど、苦心したり挫折してしまったりした方もいるかもしれません。そのように苦労してしまうのも当然で、木材に施す塗装には多くの種類や手法が存在しています。それらを何も知らずに見切り発車で手を付けてしまうと、思わぬ苦戦を強いられてイメージ通りの完成にたどり着けなくなってしまうでしょう。
そこでこの記事では木材の塗装の基本的な部分から種類などをご説明します。
1.塗装の目的
そもそも木材は何のために塗装を施すのでしょうか。まず第一に、塗装を施すことで見た目が美しくなります。人類の歴史は塗装、塗料の進化の歴史でもあります。
塗装の始まりは約9000年前の副葬品として出土した漆塗りと言われていて、漆は現在でも頻繁に用いられている塗料の一つです。現在用いられている塗料は他にも数多く、さまざまな試行錯誤が繰り返されてきています。
なぜ、そんなにもさまざまな塗装が模索されてきたかと言うと、第二に木材の保護という目的があるためです。大気中の水気や酸素に晒された木材は、徐々に傷んで老朽化していってしまいます。ですが、表面に塗装でコーティングを施すことで、老朽化や虫食いなどから木材を保護できるようになるのです。
歴史上で塗装が文明を進めた例としては、造船技術が挙げられます。1853年に浦賀沖に来航したペリーが乗っていた黒船には、タールやピッチを利用した黒い塗料が塗られていました。これによって船に用いられている木材の防腐性と防水性が飛躍的に高まり、巨大な船による長期間の航海が可能になったことで、遠方の国へと赴くことができるようになったのです。塗装技術がなければ日本の開国ももう少し遅れていたかもしれません。そう考えると、人類史における塗装の重要性に少し実感が湧くのではないでしょうか。
2.塗装の種類
最初に述べた通り、現代で用いられている塗装にはさまざまな種類があります。木材に用いられているポピュラーなものを挙げていくと、ペンキ、ウレタン、ニス、ワックス、ラッカー、ステイン、オイル、漆、カシュー、柿渋などがあります。今回はその中でペンキ、ニス、ワックス、オイル、ステインについてご説明します。
まず、ペンキとは樹脂に水や油を混ぜたものです。塗料を塗りつけることで木材の表面にできる塗料の膜のことを「塗膜」と呼びますが、ペンキは木材に染み込まず、その表面に塗膜を形成します。不透明なため下地は透けて見えず、はっきりとした発色なため木材の元の木目は完全に隠れてしまいます。元の木目を活かしたいと考えている場合はペンキは避けた方が無難でしょう。
対して、ニスはペンキ同様に塗膜を作るタイプの塗料ですが透明です。これを塗ることで木材に光沢と艶が生まれ、表面の保護効果も非常に高いものとなっています。なお、同じニスでもカラーニスと呼ばれるものは色付きのため、注意が必要です。
次に、質感、使用感ともにバターと似ているワックスは、上の二つと異なり木材の中にわずかに染み込み、浸透しなかった残りの塗料が表面に残って薄い塗膜を形成します。外見上の変化は木材の表面に軽めの艶を出す程度に留まり、どちらかといえば木材の乾燥を防ぎ、汚れから保護する役割がメインです。摩耗すれば塗り直す類です。(厳密には塗装とは区別されます)
オイルは塗りつけた大部分が木材の内部へと浸透していきます。この塗料は酸素に触れると固まって樹脂化するため、これを染み込ませることで内部から木材を保護することが可能です。表面には塗膜ができないため、元の木の質感と手触りが活かされた仕上がりとなるのが特徴です。
そして、塗膜を形成しないのがステインです。厳密に分類すればステインは塗料ではなく着色剤で、木材を保護する作用はなく単純に木材に色を付けるためだけに用いられます。発色は非常に良いのですが塗膜が作られないため、触れたものに色移りしてしまわないよう別途ニスやオイルで上から塗膜を作る必要があります。
3.塗装が木材にもたらす効果
塗装をすることで木材が保護されると述べましたが、無塗装と塗装済みの木材ではその耐用性にどの程度の差が出るものなのでしょうか。直径が10~20㎝のマツやスギの丸太を杭として地面に立てたとき、無塗装の場合は2~4年がおおよその耐用年数となりますが、そこに塗装を施すことで、塗膜されるタイプの塗料であれば3年程度、浸透するタイプの塗料であれば2~3年ほどの耐用年数の延長が見込めるとされています。
このことからもわかる通り、木材を利用することと塗装は見た目を美しく整えるだけでなく、長く使用できるという非常に重要な役割を果たしているのです。
4.まとめ
木材と塗装の関係性について簡単にご紹介させていただきましたが、実際にはここでは紹介しきれなかった多種多様な塗料や塗装技術が存在しています。みなさまが手元に置いている木製の品々にも、おそらく品ごとの用途に合わせたさまざまな塗装が施されていることでしょう。もし今後ホームセンターなどを訪れる機会があれば、塗装関係のコーナーに足を運んで少し眺めてみるのも面白いかもしれません。
また、直近では「抗菌剤」を混ぜ合わせた塗料、塗装も開発され始めております。