色合いから考える樹種の選び方
古来から人間は家造りを木でしてきました。また家だけではなく、寺院や教会、公共施設に至るまで、鉄筋コンクリート製の建物が普及するまで、これらはすべて木によって建てられてきました。ただ、昔の人々もその木の持つ特性や色合いといったものを大切にし、時にそれらの特徴が際立つように配置を考えたりもしていました。
それは現代生活においても同じなのですが、そもそも建築資材に使われる木材にはどのような種類があるのでしょうか。今回はそんな樹種について詳しく迫っていきます。
1.樹種の種類と特徴
建築に使用される樹種はいくつかあります。スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツ、ヒバ、クリ、カバ、カエデ、センが日本では代表的な木材です。それぞれの持つ硬度、模様、強度などの要素によって使用される部位は少しずつ変わってきます。例えば、古くから建築資材として使用されているスギとヒノキは、どちらもその耐久性から重宝されてきました。ですが、詳しい用途を比較してみると、スギは柔らかく加工しやすいため床板などの資材に限らず、スギそのものを魅せるための「あしらい材」としての使用例もあります。一方のヒノキは硬く頑丈なので、柱や土台といった文字通り「縁の下の力持ち」というポジションで使用されることが多いのがこの2つの大きな違いです。
また、昨今の住宅でたびたび問題になるシックハウス症候群の軽減であったり、抗菌・耐水性を評価された木材であったりと、その樹種によって効果を最大限に発揮する場面での使用が、資材としての使い分けの判断材料となっています。
建築に使われる木材は樹種での分類分けと同時に、無垢材と集成材の2種類に大別されるのも木材選びのポイントです。無垢材は価格が高いものの、丸太から切り出されたいわゆる1本ものであり、木材本来の特性を活かすことができます。対して集成材は、複数の木材を特殊な接着剤で張り合わせてできたもので、値段は無垢材より安く規格が決まっているため個体差がないのが特徴です。これらの要素を加味して、建築に使用される木材は適材適所で選ばれているのす。
2.樹種の色
使用用途に関して簡単にご説明しましたが、家を建てるうえで色合いも大事な要素の1つです。樹種によってその色合いは大きく異なる場合もあり、高級感やぬくもりを求めるのであればそういった木材による色合いの違いも意識しなければなりません。もちろん家が建ったあとで塗料や壁紙で装飾することも可能ですが、木材には木材にしか出せない色合い、風合いがあるのも事実。それらを活かしたいのであれば、樹種による色合いの違いも家造りにおいて外せないポイントとなります。
木の色と言われてすぐに思いつくのは、薄い黄色い色ではないでしょうか。内側から外側にかけて大きな色の変化がないのが特徴で、ナラ、クリ、センなどがそれに当たります。一括で紹介しましたが、もちろん木材による微妙な色合いの違いが存在するので、気になる方は一度サンプルを見せてもらうのもいいでしょう。ブラックウォールナットに代表されるようなこげ茶色も現在では人気の高い色合いを持つ木材です。フローリングや壁に使われることも増えており、シックな見た目に仕上がる特徴があります。
また、樹皮側に近づくにつれ色合いが薄くなる特徴もあり、全体の印象が激しくなることもあります。
数は少ないですが、赤みの強い色合いの木材も存在します。サクラの一部やブラックチェリーが現在は主流ですが、以前はブビンガというアフリカ原産の巨木も用いられていました。ただ、ブビンガは近年では日本への輸出量が減ってしまい大変高価な木材となってしまっています。
白色系の木材は、黄色よりも清潔感を出せる色合いのひとつ。白色「系」とつくのは完全な白色ではないためです。カエデであればやや黄色みがかった白、ブナならば赤みがかった白色というような感じになります。主に北欧系のテイストがお好みの方は白色系を使われる方がいいでしょう。
3.樹種の選び方のポイント
ここまで、樹種の種類と色合いについて説明しましたが、では結局好き勝手選んでいいのかと言われるとそうではありません。「樹種の種類と特徴」でも簡単に触れましたが、樹種によってその特性と役割が大きく変わります。例えば、同じ木だからといってすべての樹種が柱に使えるとは限りません。柱は建物を支えるための重要なパーツであるため、太さはもとよりその剛性が求められます。仮に、ある程度剛性があるものの加工しやすいスギを柱に選ぶことはできることはできますが、大きな衝撃に耐えられず破損してしまう場合も考えられます。
一方で「やたらめったらいろんな種類を使えばいい」というものでもありません。建築物においてもデザイナーの役割が果たす意味は大きく、完成後の建物の印象をどう与えるかというのは彼らの仕事における至上命題のひとつです。もちろん、適材適所で木材を使い分けるのは大事なのですが、外観や内装を無視した設計というのは基本的にありえません。デザインは建物の印象を変えてしまうので、そのあたりをしっかりと抑えておかなければまとまりのない雰囲気を出してしまうのです。
また、近年では住宅の洋風化の影響で海外から輸入された木材も多分に使われているのが現状です。数は少ないですが、中にはずさんな管理のもとで輸出されてしまうような木材も存在し、一生に一度の買い物を台無しにされてしまうこともないわけではありません。木材を選ぶ際は基準に適合しているか、その特性はなにか、色合いはどういうふうかを複合的に考えなければいけないのです。
もちろん、そういった問題に関してすべて購入者側の負担には建築業界もしないようリサーチしています。要望や質問があれば、随時建築会社や建築士に問い合わせてみるといいでしょう。
まとめ
鉄筋コンクリートの建物が増えても、建築物における木材の役割は重要な意味を果たしています。古来から人間が木材の特徴や色合いを活かして来たことは、おそらくおわかりかと思います。この傾向は、建物が洋風化しても、鉄筋コンクリート化してもなんら変わることはありません。建物の中で重要な位置を占める木材。今後家を建てる予定の方、リフォームを考えておられる方はぜひ樹種の特性、色合いを考えながら建築会社や建築士と相談して、ご自身の納得行く形にする参考にしていただければ幸いです。