木材×NC機 加工技術紹介
木材には様々な加工工程があり、各工程で使用する機械も多種多様なものがあります。その中でも、NC加工は現在の木材加工において重要な役割を担っており、必須の技術であるといっても過言ではありません。本記事では、木材のNC加工について、その技術や特徴、できることについてまとめました。
1.NC加工とは?
NC加工とは、数値制御(Numerically Control)を用いた加工のことを指します。人手による加工とは異なり、必要な寸法を入力すると、それに対して機械が自動で動いて加工してくれるというものです。NC加工を行うためには、NC工作機械を使用する必要があり、木材加工に限らず金属加工の世界においても幅広く使用されています。自動車や半導体、航空機などの精密加工部品は、NC加工機によって生み出され、工業の発展に大きく貢献してきました。木材加工におけるNC加工とは、主にNCルーターを用いた加工のことを指します。
2.NCルーター
NCルーターとは工作機械の一種で、テーブルとヘッドを備えています。(ルーターとはネットワーク機器のルーターではなく、工具としての「くり抜き機」の意味です。)テーブルとは、ワーク(材料のこと)をセットするための台のことです。ワークは板状のものが多く、加工時にずれないよう、がっちりと固定しなければなりません。ヘッドは、3軸(X,Y,Z軸)方向に自由に動作し、先端に工具(ドリルのようなもの)が取り付けられています。工具は回転し、その先端がワークに触れることでワークは削られ、加工が行われます。ヘッドの動作を数値制御することにより、様々な動作をさせることができるのです。
3.NCプログラム
NCルーターを動作させるには、NCプログラムというものが必要になります。必要な形を作り上げるには、工具の先端がワークに対してどのような位置にあるのか、を制御しなければなりません。その動作を実現させるためのプログラムのことをNCプログラムと呼びます。NCプログラムは、NC言語という専用のプログラミング言語で作られます。一般的なプログラミング言語と同様、記述には様々なルールがありますが、NC工作機械の動作に特化しているため、動作を簡潔に記述することができるのが特徴です。
工具の座標(X,Y,Z)や回転数、送り速度などがコードとして用意されており、一連の動作の最初から最後までをプログラムをしてまとめます。工具の動きを決定するためには、製作する部品の形状データが必要です。
CAMソフトを用いると、CAD(図面作成等を行うことができるソフトウェア)等を使って作成した形状データを、NCプログラムに変換することができます。複雑な形状のものを作るためには、どうしてもプログラムも複雑にならざるを得ません。CAD → CAMの連携はNC工作機械を動作させる上で重要な要素であると言えるでしょう。NCプログラムがあれば、1つの製品の製作に対する動作を保存することができます。それにより、次回同じ製品を製作する際にはプログラムを呼び出すだけで加工が可能になるのです。
4.NC加工の特徴とポイント
ここではNC加工における特徴についてご紹介します。
① 複雑な形状の加工ができる
まず、複雑な形状の加工が可能になります。人手による加工では、ハンドルやレバーを操作し細かい目盛を見ながら動きを調整する必要がありました。NC加工を導入することで、加工機の操作が簡単になり、習熟度の低い人でも様々な加工ができるようになります。 また、複数の軸を同時に動作させることができるため、人の手ではできなかった加工も実現させることが可能になりました。
② 作業時間の短縮
従来の人手による作業では、常に人が機械の前に立って作業を行う必要がありました。NCを用いて自動で機械を動作させることで、その時間を別の作業に使うことができます。 次の加工の段取りを行ったり、別の機械を操作することだって可能です。休み時間や夜間の運転も可能になるため、短い納期でものづくりができるようになりました。
③品質の安定
NCプログラムを用いることで、機械は毎回同じ動作を行ってくれます。精密な位置制御により複雑な形状の加工を精度よく行うことができ、基本的にはワークをきちんとセットするだけで、同じ品質の製品を作り出すことが可能です。加工を容易にするための治具(ワークや工具を必要な位置にセットするための道具のこと)等も不要になり、より容易に品質を安定させることが可能になりました。
5.木材×NC加工でできること
ここまで紹介してきた通り、NCの導入により木材加工の幅はぐんと広がりました。曲線に沿って切り出したり、深さが異なる溝を掘るといった複雑な加工を容易に行うことができるようになります。例えば、椅子が背中にフィットするように曲面状に加工されているのはNC加工によって行われています。ギターのボディや、彫刻といった三次元形状の製作も可能です。
また、3軸加工機だけでも様々な形状を生み出すことが可能ですが、5軸加工機を用いることでより複雑な加工が短時間でできるようになります。5軸加工機を持つ工場に加工の相談をすれば、今までできなかった形状ができるようになるかもしれませんね。もちろんNC加工でもできないことはあります。対象となるワークが小さすぎて工具がアプローチできない場合は、手作業で仕上げを行わなければなりません。
穴が深すぎて工具がたどり着かない場合には、分割して製作する必要が発生します。また、コンピュータによる数値制御を行っているため、理論上は様々な形状を作り上げることが可能になりますが、実際にはプログラムを作成するノウハウが必要です。加工屋さんによって得意な加工や形状が異なるため、個性が出てとても面白いですよ。
6.まとめ
木材加工におけるNCの役割やできることについて解説してきました。精密な製品を簡単に、いくつも作り出すことができるので、現代の加工には欠かせない技術です。もちろん最後の品質チェックは人の手や目で行う必要はありますが、機械の動作という点ではばらつきがなくなり、安定したものづくりができるようになりました。
工作機械の特性を知り、加工についてのイメージを行うことが、理想の形状を作り出すために必要であることを覚えておきましょう。