環境保全に貢献する、PEFCとは?

家造り、建物造りに欠かせない建築資材、木材。近年の住宅事情から鉄筋コンクリート製のものも増えつつあるが、やはり古来から木を使ってきた我々人類にとって、木なしの建築物というのはありえません。住宅であればフローリングや壁、天井に今でも使われ、DIYでもウッドデッキの自作など、まだまだ木の需要は衰えていないのが現状です。

しかし一方で、人間の経済活動による世界的な森林伐採も問題視されています。これにより、従来森林に住んでいた動物たちが絶滅の危機に瀕することもあり、生物多様性の観点からも森林伐採がやみくもに進むと生態系を完全に破壊してしまう可能性も指摘されているのです。これらを守るために設立されたのがPEFCなのですが、この組織について初耳の方も少なくはないでしょう。

今回はこのPEFCと森林保全の役割についてご紹介します。

1.森林認証制度とは何のためのものか

本題に入る前に、大前提となる森林認証制度についてご説明しておきましょう。

森林認証制度とは、1993年にWWF(世界自然保護基金)によってFSC(Forest Stewardship Council)が設立されたことに始まる、「再生可能な森林経営」を運営できている団体に与えられる国際認証制度認定機関のことです。「再生可能な森林経営」と言われてもピンと来ないかもしれませんが、簡単に言うと、認証を受けた森林から伐採・販売された木材の売却費用によって森林を守る活動のことを言います。

あとで詳しく説明しますが、この認証を受けた森林の木材は販売される際に、森林認証を受けた森林のものであるというタグがつけられます。そして他の木材とは別に扱われ、その販売収益によって植樹や、森林一体に住む人びとのライフラインの整備など、無造作かつ無尽蔵に森林が破壊されないようにする運営がなされているのです。

森林認証制度に認定された団体や企業にもメリットがあります。それは団体・企業PRの一環であるCSR(企業の社会的責任)活動として報告・宣伝できることです。企業などの営利を目的とした集団のみならず、NGO・NPOにとっても、森林認証制度を取得することは、そのステークホルダーに対してのPRができるのです。

現在、この森林認証制度にはPEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification)とFSCの2つがあります。今回はこのうちのPEFCについてご説明します。

2.FMとCoCとは何か

PEFCは認証を与えるかどうかを判断する組織であり、PEFCという認証はありません。PEFCによって与えられる認証には2つの認証が存在します。それがFM認証とCoC認証です。

FM認証は略さずにいうと「Forest Management(森林管理)」となります。これは森林経営がPEFCの取り決めた基準を満たした、非常に高いレベルで管理されている森林経営者、林業経営者に与えられるもの。ただ、PEFCと前出のFSCではFM認証の基準が異なります。

FSCは独自の管理基準を持っており、全世界のどの国、どの地域においてもこの基準が満たされていなければFM認証が認められるわけではないのです。一方のPEFCは、各国が独自で定めた森林認証制度を相互承認しており、PEFCの基準もそれに伴って柔軟に変化させています。そのため、FSCに比べてFM認証が認められやすく、各国の基準を尊重するため、現在ではFM認証された森林の総面積が3億ヘクタールにのぼるとも。もちろん、賛否両論はあるのですが、各国の事情に合わせられているため、承認後の森林経営において負担が大きくなりにくいメリットがあります。

続くCoC認証とは、正式名称を「Chain of Custody(管理の連鎖)」という、森林経営にとどまらない品質管理の認証制度です。このCoC認証はPEFC、FSCともに同じもので、簡単に説明すると、FM認証を受けた森林から生産された木材が消費者の手に渡るまでの管理が徹底されているものに与えられるのです。つまり、生産→輸送→加工→販売までのすべての流れにおいて、他の木材とは別に管理される証なのです。CoC認証を受けた木材はその適合証として専用のタグが付けられ、他の非承認木材と流通の過程で混同されてしまわないようしています。この木材が消費者の手に渡ることで、森林保全活動につながるのです。

3.PEFCは世界最大の認証制度である

以上、PEFCによって認められるFM認証とCoC認証について説明しました。では、PEFCとFSCのどちらが世界的に信用のおける組織なのでしょうか。結論から言えば、加盟数、FM認証済み森林総面積の点からPEFCが世界最大、つまり全世界的に信頼されている国際認証機関となります。

現在、PEFCに加盟する国の数は51か国、FM認証された森林の総面積は約3億ヘクタールとなります。一方のFSCは加盟国数は公表していませんが、FM認証された森林の総面積は約2億ヘクタールと、約1億ヘクタールの差があるのです。なぜそれほどまでに差がついたのか、その理由は認証するうえで判断材料となる認証基準の厳しさにあります。

FSCは、その設立がWWFによって行われた背景もあり、かなり厳しい基準を設けています。FSC、PEFC設立と同時に多くの国が独自で森林認証制度を設け始めたのですが、FSCは各国独自の認証制度を無視し、FSCが取り決めた基準によって認証を与えるかどうかの判断をしているのです。そのため、経済的に経営困難な国はFSCの定める基準での森林運営ができず、一度認証されてもその後認証を取り上げられてしまうということもあったのです。これに対してPEFCは、もちろん独自の基準を設けていますが、各国の事情によって作られた森林認証制度を尊重する形で、相互認証という形をとっています。つまり、PEFCに認められた各国独自の認証制度は、そのままPEFCの認証基準として認められるのです。この性質は非常に強く、特にアフリカや東南アジアなどの発展途上国に歓迎されているのです。

4.どんな製品があるのか

PEFC認証された木材を使った製品とはどんなものがあるのでしょうか。建築資材の他にも意外に身近な商品があるかもしれませんね。

木材と言いましたが、その用途は多種多様で、PEFC認証が与えられた木材も例外ではありません。

例えば紙類もそのうちのひとつ。PEFCでは紙製品も認証木材使用の対象製品となっています。日本でも紙パッケージや印刷物、コピー用紙でそれらを手にすることができます。

また、コルクやトリュフといった非木質林産物も含まれるほか、再生原料と認証された木材を混ぜ合わせたリサイクル製品も含まれています。ちなみに、どれが認証材を使った製品かを見分けるには、商品そのものに印字されているPEFCの刻印を見るか、PEFCのロゴマークがパッケージに記載されているのを確認すれば見分けることができます。

まとめ

PEFC認証は世界の森林を、ひいては生態系や地球温暖化から地球を守るために必要な認証です。

冒頭でもお話しした通り、人類は木の存在なしに生活することはできません。しかし、無尽蔵にあるわけではない資源でもあるため、その管理は非常に難しいものがあります。PEFC認証された製品を買うことで、たとえ微力であってもその森林管理の役にたつこと、そして環境保全への協力ができるのです。

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